COLUMN

2021.05.20

自分らしさという罠

坂田 坂田

いつからでしょうか。

自分らしさ、がひどく大切なものになったのは。

「世界に一つだけの花」がもたらしたもの

世界に一つだけの花、というSMAPのヒット曲があります。
槇原敬之さん作詞・作曲、シングルとしては2003年3月にリリースされました。

印象的なのは「No.1にならなくてもいい、もともと特別なオンリーワン」というフレーズ。

一番を目指す必要はない。ありのままの自分でいい。

そのメッセージは、運動会の徒競走で順位をつけず、みんなで手をつないでテープを切る学校が増えたと言われる社会の中で、熱烈に支持されました。

SMAP初のダブルミリオンという爆発的なヒットを飛ばしたのです。

最近すっかり浸透しつつある「多様性」の概念を肯定したハシリでもあるのかもしれません。

下積みが長かったとはいえ、当時はもう圧倒的なトップランナー、どう見てもぶっちぎりNo.1であるSMAPがそんなふうに歌ったというのも、なかなかにインパクトがありました。

この曲を聴いて、肩の力を抜いていいんだと安心した、という人も少なくないのでしょう。

やさしい言葉づかいに分かりやすいメロディも素敵で、世代を超えて愛される平成の名曲であります。

オンリーワンも、割とハードル高い説

でも、ふと思うのです。

「特別なオンリーワン」とまで言われてしまうと、ちょっと荷が重いかもしれない。

No.1の代わりに「自分らしさ」や「個性」、「アイデンティティ」などが過剰に求められそうな危うさを、どこかに内包している気がするのです。

確かにNo.1になるのは大変だけれど、オンリーワンになるのだってけっこう大変。

特に何かができる訳でもなく、自分が何者であるのかを即答できない私のような人間にとっては、少し酷な話でもあります。

自分らしさという罠

自分らしさとか、オンリーワンである必要とか、本当にあるのかな。

ものすごくふつうで、どこにでもいるおばさんである私は、どうしたら良いのかな。

私はライターですから文章を書くのが仕事ですが、そこに「自分らしさ」を問われると困ってしまうのです。

ライティングの技術は勉強すればある程度は身につけられるし、書いているうちに自然と磨かれていきます。

問題は、センスとか個性の部分。それってけっこうシビアです。

何者でもない自分。特に個性的でもなければ突出した何かを持っている訳ではない。キャラとかも特にない。

自分の書いた文章の圧倒的なつまらなさに打ちのめされる時(まあまあ頻繁にありますが)、アイデンティティの弱さに絶望するのです。

いや、自分らしさとか本当にいるのかな。罠なんじゃないかな。

まあ仕方がないので猫を愛でています

No.1もオンリーワンも、凡人にはどちらも同じくらい大変。

かつ私は押しも押されもせぬ40代ですから、もはや悠長に自分探しとかする歳でもありません。

バックパックで世界を旅してガンジス川の沐浴とかパシュパティナートの火葬とかを眺めて、そんな中で自分が見つかれば良いのですが。

困った時には、事務所をうろうろしている猫3匹を愛でて過ごします。

いちろう・じろう・さぶろうの3匹は、いつだって全員がNo.1で全員がオンリーワン。

かわいい。もともと特別なオンリーワンって、まったくもって猫のためにあるようなフレーズです。

ひざに乗ってきた猫をなでていると、私には自分らしさとか個性とか全然ないけど、猫が来てくれるからまあいいかなって思えます。

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