コラム
COLUMN
大河ドラマを見ていたら方言が気になった件
日曜の夜にテレビをつけたら、新型コロナウイルスの影響によりNHK大河ドラマが特番に変わっていました。
たくさんの人を集めて行うドラマの撮影ができないため、しばらく放送休止するというのです。
大河ドラマで抹消されがちな方言
6月14日の放送は特番になり、名作として名高い渡辺謙さん主演の「独眼竜政宗」が紹介されていました。
ぼんやり見ていて、以前から感じていた時代劇の話し言葉に関する疑問がわいてきました。
「時代劇での方言と標準語の使い分け問題」です。
たとえば今年のNHK大河ドラマ「麒麟がくる」の主人公は明智光秀で、美濃の国つまり岐阜県が舞台です。
「麒麟がくる」の主な登場人物は、誰一人なまっていません。ちょっと不思議です。私は岐阜の生まれですが、故郷の人々は決して標準語ではないのです。
織田信長は尾張や美濃あたりをメインに暮らしていたのだから、現在でいう名古屋弁あるいは岐阜弁を話していた可能性が高いでしょう。
しかし、かつて何度となく時代劇で描かれてきた信長が名古屋弁だったことは一度もなかったように思います。明智光秀も同じです。
なぜでしょうか。
羽柴秀吉だけはひどいなまりで描かれることも多いけれど、これは地域性ではなく身分の低さからくる特性として表現されているように思われます。
基本的に東海地方のサムライは皆、大河ドラマでは標準語を話しがち。
東北地方も同じです。「独眼竜政宗」でも、伊達政宗をはじめ多くの登場人物が標準語をあやつっていました。不思議です。
でもまあ明智光秀に「敵は本能寺やて!」とか言われたら、しまらないかな。
個人的には長谷川博己さんの岐阜弁、聞いてみたいけれど。
それにひきかえ薩摩と土佐の鉄板ぶり
一方で、めちゃくちゃ激しくなまって描かれるパターンも存在します。
これはもう、薩摩と土佐が二大巨頭です。
西郷隆盛はもれなく「おいどんでごわす」みたいな口調だし、坂本龍馬はいつだって「新しい日本を作るぜよ」とか言っている気がします。
なぜか薩摩と土佐だけ激しくなまってる問題。
しかも時代劇の方言は、実際の幕末の薩摩弁、土佐弁という訳ではなさそうです。あくまでも、現代の私たちの耳にそれらしく聞こえる薩摩弁、土佐弁なのでしょう。
そうやってマイルドにした方言なら、東北地方や東海地方のサムライにだって適用できそうなのに、そうはならない。
らしさ、のよりどころが方言
なぜ彼らだけそんなに全力でなまっているのか。不思議です。
これはもう「その方がそれっぽいから」というだけなのかな。
みんなが思う西郷さんが、ごわす言葉だから。
みんなが思う坂本龍馬は、ぜよ言葉だから。
それが「らしさ」であるという共通認識が、いつのまにか出来上がってしまったのかもしれません。
でもその共通認識の効果は絶大です。西郷隆盛や坂本龍馬はたぶん誰もが知っているし、一定のイメージを持っています。
説得力を持たせ、その人ならではの雰囲気を作る。その場の空気をガラリと変え、ぐっと引きつける。そんな効果が方言にはあります。
これはドラマの中に限ったことではないかもしれません。普段のライティング仕事においても、ここぞという時に方言を使いこなせたらいいなあ、なんて思います。
おまけ:「強か」って何て読むのか問題
方言と言えば。最後に、これ何と読みますか。
「強か」
反射的に「つよか」と読んだ人はもれなく九州人です。
ちなみに私は読み方が分からず「おごそか」、「にわか」、いや違う・・・何かしら?という感じでした。
念のため、正しい答えは「したたか」です。
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ライター紹介
坂田 恵里
ライター兼雑用係。移住組のよそ者ですが、熊本が大好き。おいしい飲食店の情報を探すうちに肥後ジャーナルに出会った元読者です。
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